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電気・エネルギー講座

米国におけるスマートグリッド開発動向と日本の次世代電力網

2009/10/15 更新

夏季休暇を利用して、米国・コーネル大学に滞在した。この大学は、これまで多数のノーベル賞受賞者を輩出している名門大学である。そしてここでも、低炭素社会実現のための技術として、電気情報、エネルギー、環境分野が脚光を浴びている。大学内には、環境・エネルギー研究センターが設立され、近く高度配電システム・スマートグリッド研究センターも設置されるとのことだ。
     
この背景には、米国内のスマートグリッドに対する関心の高まりがある。それを端的に示すのが2009年2月に発表された経済対策法で、ここではスマートグリッドに対し45億ドルの予算が計上された。スマートグリッドとは、情報技術(IT)や先端エネルギー技術を活用した次世代の電力網(グリッド)のこと。
    
米国において、このような次世代グリッドが求められる理由は、
    
1. 米国の電力網は、クローズドで高度なインフラを有する日本と違い、停電が多いなど供給信頼度が低く、旧態化しており、インフラの再整備が喫緊の課題であること
     
2. 欧州などと同様に、米国でも近年、再生可能エネルギーの系統連系量が増え、これらの不安定なエネルギーのアクセス拡大に対応できる新たなシステムが必要となりつつあること──などである。
     
    
一方、信頼度の高い電力供給システムが完備されている日本においては、次世代グリッドの開発方向はかなり異なる。
    
日本では、いまだ完備されていない離島や僻地向けおよび、未電化地域を有する途上国向けへの供給システムの開発を進めるべきと考えられる。そこでは大規模で高価なネットワークを一度につくるのではなく、地域や集落特性に合わせた適正規模の供給ネットワーク(クラスターと呼ぶ)をつくり、必要に応じて随時クラスターを増設する方法が有効だ。クラスターの相互結合型ネットワークを開発し、実証試験を行うのである。そうしたネットワーク構造をつくり、各種再生可能エネルギー利用電源からの電力供給、地域への交流/直流電力供給、電動車両への急速充電、電力貯蔵装置の有効活用、双方向情報通信を用いた需要家リスポンスの活用などを推進させる。
     
欧米諸国は、過去15年、電力自由化の旗印のもと利益のみを追求し、電力設備投資を怠ったためインフラ劣化に苦慮している。日本はそれら欧米諸国とは距離を置き、エネルギー供給ネットワーク全体での電力品質維持のみならず、配電損失の最小化、温室効果ガス排出削減、経済性維持といった多数の目標を協調させた、一歩進んだスマートな需給運用制御方式を構築することになろう。
          

【横山隆一教授 プロフィール】
1944年生。1973年早稲田大学工学研究科博士課程修了。
工学博士。早稲田大学環境総合研究センター教授。
環境エネルギーシステムの計画・運用・制御に関する研究に従事。IEEJ、IEEE Senior Member、CIGRE会員。
    
早稲田大学大学院 環境・エネルギー研究科 横山隆一研究室
http://www.f.waseda.jp/yokoyama-ryuichi/index.html

 

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