電気

電力事情

低炭素社会づくりにおける電力の役割  

2009/04/20 更新

 2008年6月「低炭素社会の実現」に向けた基本的な方針が示され、同年7月29日にはこの基本方針に基づく具体的な施策として「低炭素社会づくり行動計画」が閣議決定された。
 低炭素社会づくり行動計画に記載されている主な具体策は、
 1. 革新的太陽光発電
 2. 再生可能エネルギーや原子力発電等、ゼロ・エミッション電源の割合50%以上の達成
 3. プラグインハイブリッド自動車・電気自動車の普及
 4. 白熱電球の省エネランプへの切替
 5. 省エネ型家電の導入の加速
 6. 省エネ住宅・ビル、200年住宅の普及
 7. 原子力の推進
 である。


 この中でも、特に日本の温暖化ガス排出量の約2割を占める運輸部門と、約3割を占める電力部門における対策は非常に重要とみられている。


 まず、運輸部門であるが、これは昨年国内の新車販売台数が34年ぶりの低水準に落ち込む中、ガソリンエンジンと電気モーターを併用したハイブリッド車は前年比17・6%増の10万台に達したという。100年に一度といわれる世界的な不況の影響もあり、ハイブリッドや電気自動車は新たな自動車需要の牽引役としての期待も大きく、各社研究開発に余念がないようだ。

 「自動車が電気で動く」この変化はエネルギー業界にも多大な影響を及ぼす。例えば、プラグイン式のハイブリッド自動車や電気自動車が増え、皆が夜間に充電をするようになれば、夜間電力の利用量が増え、昼夜の負荷平準化につながる。また、ガソリンスタンドでガソリンを入れる代わりに電気を充電することになれば、電力需要そのものが増えることになるだろう。電気事業と自動車が将来密接な関係となることは間違いないようだ。


 次に、電力部門では、ゼロ・エミッション電源の比率を10%増やすという。電気事業連合会のホームページによると、2006年の日本の電源別年間発電電力量割合は、原子力30%、石油等10%、石炭24%、天然ガス26%、水力9%、地熱および新エネルギ11%となっており、ゼロ・エミッション電源である原子力+水力+地熱・新エネルギーの合計は40%となっている。低炭素社会づくり行動計画によれば、この比率を50%にまで上げる計画だ。 このように、電源サイドで種別の構成が変わることは電力系統に対しても影響を与える。特に、太陽光や風力発電のように、天候の影響を受けて発電する電源が増えることになれば、系統への影響が懸念される。


 そこで、ゼロ・エミッション電源の普及により電力の安定供給が損なわれることがないよう、低炭素電力供給システムにおける系統安定化対策、そのためのコスト負担をどうするかという問題を、ゼロ・エミッション電源の普及と同時に解決しておかなければならない。そうした懸念を背景として、資源エネルギー庁に「低炭素研究会」が組織され、新エネルギーの大量導入時における系統安定化対策、低炭素電力供給システムにおける電源のベストミックスについての検討がなされることとなった。


 同研究会および関連の小委員会による報告書をみると、新エネルギー(具体的な研究対象としてとりあげられたのは太陽光発電)の大量導入時の電力系統における課題として、

 1. 電気事業法に基づく適正値を超えた電力量が送電網に流れ込んできてしまうケース(太陽光発電所から発電された電気が送電線に流れ込むポイントでの供給過多)

 2. ベースの供給力(原子力、流れ込み式水力、火力最低出力の合計:運転を止めることが実質的に困難なもの)+太陽光発電による発電量の合計が総需要量を上回ってしまうケース(全体として供給量が需要量を上回り余剰が生じてしまう)

 3. 天候などの影響により出力が大幅に変動する可能性が高いことから、現在電力会社が確保している「適正な調整力」では調整しきれなくなってしまうケース

4. 事故等非常事態発生の際の扱い等──が挙げられている。


 安定供給を維持しながら、電源構成における新エネルギーの比率を上げるためには、これらの問題について十分な検討が必要だ。また、その際には、従来の供給区域内での安定供給という観点ではなく、日本全体を一つのネットワークとしてとらえた安定供給という観点での検討がなされること、価格についても取引市場を用いた価格決定メカニズムという観点での検討がなされるべきではないだろうか。ネットワークが広くなるほどゼロ・エミッション電源によりもたらされるぶれの調整はしやすくなると考えられ、投資も少なくて済むはずだ。取引市場を用いた価格決定メカニズムについては、例えば、「家庭用太陽光発電等からの余剰電力の買い取りにかかるコスト」という検討項目があるが、もし一般家庭が余った電気を販売できる取引市場が形成されれば、余った電気について電力会社が一方的に価格をつけるのではなく、市場で価格が決定される仕組みを導入することも可能だ。


 これまで電気という商品は嗜好性を反映することができないため、自由化された電力市場でも価格のみが競争の条件となりがちであった。しかし、新エネルギーは違う。特定の事業者に義務的に新エネルギーを導入させるのではなく、まずはゼロ・エミッションということに対する個人の嗜好を反映して価格が決定される仕組みの導入を期待する。

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