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電力事情
「CO2 フリー電気」の取引市場誕生に期待
2008/10/01 更新 「気候変動」は2008年7月7日より開催された洞爺湖サミットの最重要議題であった。二酸化炭素(CO2)排出量の削減について、前回のダボス会議ではその総量を規制するという方針が定められた。そして、今回の洞爺湖サミットでは、その方針を具体化するための数値目標につき、セクター別アプローチという日本の提案が認められた。洞爺湖サミットの課題は、「G8として長期目標に合意がされるか」と、「中期目標はどうなるか」であった。
前者は、2050年までにCO2排出量を現状から少なくとも50%削減するという長期目標について、後者に関しては、長期目標を補強する中期目標をつくるということに合意がなされた。日本国内では中期目標を明示しなかったという批判もあるが、一方で、CO2削減につき初めてアメリカの合意がなされ、国際的には高い評価を得た。
これは、世界でも数少ないG8サミットの専門研究機関・トロント大学G8サミットリサーチグループの評価概要で、「環境・気候変動」についてのA評価(これは点数にして85点)が示すとおりで過去にこれ以上の評価は二例程という相当高い評価レベル。
さて、サミットで示された世界的な長期目標だが、それは中期目標、短期目標さらには具体的な制度設計によって補強され、実効性を持つ。その目標達成のために、電力というセクターとしていかにアプローチするか。
電気事業におけるCO2対策の鍵は、電源構成と排出権取引。物理的なエコ電源の開発には多くの期間と投資を要し、また、電源構成は、全体としての適切なバランスによってリスクヘッジや効率の最適化を図っているため、そのポートフォリオを考えても制限があるだろう。しかし、エコ電源に対するニーズが高まれば、電源開発の際の選択も自ずと変わってくるのではないか。
電力網を通って消費者に届く電気には色も形もなく、これまで消費者は自らの嗜好によって「電気」を選ぶことはできなかった。しかし、これからは違う。例えば、「エコ電源を使う」ことで自社のPRをしたいという企業の要望に応じることも、「風力と水力から買いたい」という環境問題への意識の高い消費者のニーズに応じることも、制度次第で可能となる。
実際、アメリカ小売大手のホールフーズ・マーケットは「北米の拠点で使用する電気を100%風力発電で賄う」と、また、ウォルマートも「100%再生可能エネルギーで賄う」ことを宣言し、グリーン電力証書購入と組み合わせて目標を達成したという(ダイヤモンド誌)。
ここで注目されるべきは卸電力取引所(JEPX)の存在だ。これまでCO2にはCO2フリー電源を区別する制度はなかったが、制度さえ設計されれば、CO2でもCO2を出さない電気という商品の取引が可能となる。
実際、電気事業に関する分科会では、CO2におけるCO2フリー電気の取引と京都メカニズムクレジット(排出権)の取引についての検討が行われている。
しかし、今年七月に公表された「詳細制度答申」の内容は、この二つの取引は今後CO2において「実験的な取り組みとして可能な限りCO2の人的財務的負担の少ない形で実施する」とされており、また「当該取引のためにJEPXに新たに大規模な約定システムを構築することは適切でない」と消極的姿勢。
ここでいうCO2フリー電気には二つの側面があり、一つは、原子力や水力、太陽光などの発電時にCO2を排出しない電源から発電される電気。もう一つは、実際には排出されてしまうCO2を京都メカニズムクレジットの購入で調整した「みなしCO2フリー電気」。 環境問題に対する世界的な潮流があるにもかかわらず、JEPXでのCO2フリー電気の取引への消極的姿勢は、人的財務的負担を考慮してとのことだが、CO2を出さない電気を商品にすることで大幅な設備投資や人員の増強 が必要になるのか。
電力取引所であると同時に排出権取引所である北欧の「ノルドプール」。その人員は5、6人で、設備はパソコンとFAX数台とのこと。しかし、EU排出権取引所制度に対応したCO2排出権を扱う世界初の取引所として正式に開始した最初の10日間、EUで取引された排出権の7%を占めた。EU全体での1日あたりの取引量は20万〜100万トン。初の取引となったのは、スタットオイル(ノルウェー)からEDFトレーディング(フランス)への販売で、5000トン相当(この数字は日本の10電力会社の中で最もCO2を排出している会社の2倍弱)の取引であったという。これを鑑みると、JEPXに新規の大規模な約定システムを構築することも、人員や資金の大幅な増強も必要がないように感じる。
これまで自由化の観点で議論されてきたJEPXだが、その機能を活かせば、人員や設備投資もほとんどなしに環境対策に寄与することが可能だ。さらに、JEPXの参加枠を拡大すれば、日本全体としてのCO2削減目標達成に大きく貢献することもできるだろう。
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