電気
電力事情
JEPXの内部統制、見直し必要
2008/07/01 更新「卸電力取引所(JEPX)の中立・公正な事業活動を図っていく観点から、JEPXの内部組織のあり方等に『おいて』見直すべき点が『ないかどうか』」というのが昨2007年度電気事業分科会の基本答申である。
JEPXとは、電力の取引所のことで、規模こそ違うが、株式市場でいえば「東証」のようなもの。現に、諸外国では証券取引のように、電力を金融取引化している。だが日本の場合は、諸外国とは異なり、相対契約の「場」にとどまっているのが現状だ。また、依然として、取引実績も小売販売電力量の約0.2%と不活発。
そうした状況をみると、冒頭の答申については、「同社の内部組織に『ついて』見直すべき点が『ある』」といえよう。
資源エネルギー庁の資料によると、JEPXは「私設任意、参加者平等の組織形態、オープンな参加資格、透明公正な手続き、公正なルールに基づく中立性が担保された法人として設立された」とある。
確かに、JEPXの組織形態は「有限責任中間法人」である。
法務省のホームページでは、有限責任中間法人を「社員に共通する利益を図ることを目的とし、かつ、剰余金を社員に分配することを目的としない社団」と説明している。また、債権者に対する関係では、有限責任中間法人の社員は、法人の債務について対外的な責任を負わない。
さらに、有限責任中間法人では社員総会、理事、監事といった機関を設けてその運営を行う。いわゆる同窓会も、この類に属するという。
なるほど、今年5月のワーキンググループ(WG、分科会のさらに詳細制度設計を議論する場)においても、JEPXは、「私的自治によるもの」との発言があった。
そして、5月12日のWGの論点では、JEPXを、どのように統治するのかといったガバナンスについての議題は挙がっていなかった。
しかし、考えてみれば、透明性・公平性・中立性を保つべき法人、まして公益事業における「取引所」の内部統制が、果たして「私的自治」によるもので良いか。 仮にJEPX内部の透明性・公平性・中立性を、そのムラ社会に委ねるのは、一理あるかもしれない。ムラの中だけで、すべてが完結するならば。 しかし、JEPXが電力自由化という制度改革を受けて設立されたことを鑑みれば、それはマーケットの要請に応じる社会的責任を理解したガバナンスであるべきではないだろうか。
昨今の「コーポレート・ガバナンス」の「ガバナンス」は、おおよそ株式会社を念頭においた用語で、企業統治のあり方を指す。例えば、株主は議決権を行使し、取締役を選任することで、経営をコントロールすることとなるが、このような、組織内における機関の責任等ないし内部統制が「ガバナンス」の手段である。
アメリカをはじめとする海外企業の多くは、ガバナンス(所有)とマネジメント(経営)を完全に分離している。株主はガバナンスを行使し、経営者は株主価値を追求することが「社会的責任」であるともいわれる。
JEPXと同じ「取引所」の名が付く「東京証券取引所」は、株式会社である(金融商品取引法に基づく事業)。もしも、株式会社=性悪説ならば、日本経済の中核を担い、資本主義経済下で重要な役割を担う証券取引所は、なぜ株式会社か。その矛盾を問えば、中間法人は安心で、株式会社は利益追求のみなので不安という図式は浮かんでこない。
現在のJEPXの形態は、株式会社でもなく、ガバナンスもマネジメントも同一だ。
しかも、同社のホームページによると、会社規則には、「現物の電気のスポット取引並びに先渡し取引を仲介する卸電力取引所の開設・運営により、社員に共通する利益を図ることを目的とするとともに、その目的に資するため次の事業(1.卸電力取引所の運営、2. その他附帯又は関連する一切の業務)を行う」と規定されている。
事業活動によって「社員に共通する利益」を図るのだが、その社員とは、大手エネルギー関連企業21社。自由化の過程で設立されたにもかかわらず、少なくとも同社の規定上は、21社の利益のための、21社による運営である。
もちろん市場参加者は、そのような規定に則って運営されるJEPXを求めてはいない。電力取引所に求められているものは、オープンアクセスの確保、取引量増加(JEPXの活性化)、市場監視体制といった市場参加者にとっての透明性・公平性・中立性を確保することである。
そうした社会的要請に応えることが、JEPXの社会的責任であろう。
内部で内部を律するようなガバナンスの「ムラ社会的責任」ではなく、公の制度設計の議論という第三者性をもって、JEPXのあり方は、再度検討されるべきであろう。もしそうなれば、組織形態そのものの議論が、必要になるかもしれない。
現在行われている求償ルール(電力が足りなくなった際の精算ルール)の議論も重要だが、JEPXのガバナンスという総論的な議論こそが必要ではないだろうか。
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