電気
電力事情
電力自由化の阻害要因 地域間連系線
2008/01/01 更新政策とは、社会厚生や経済効率性を向上させるための目標を設定し、状態をそれに近づけるものだ。電力自由化も「安定供給」「環境適合」「競争・効率性」の同時達成で社会を豊かにすることを目指す政策である。これを踏まえ、今回は自由化における地域間連系線の役割を考えたい。
日本全国を一つの電力市場として捉えるときにポイントとなるのが「地域間連系線」である。地域間連系線とは、電力会社間をつなぐ送電系統をいう。その特徴は主に次の三つである。
第一に地域間連系線はもともと供給区域を越える電力供給を想定してつくられたものではない上、基本的に各社間を一点でつなぐ串型の形態がとられているため、全国的な送電網としては数も容量も少ない。第二に、実績データからすれば、送電系統の稼働率は発電所の平均稼働率に比べて低い。2003年度の実績でみると、ほとんどの送電系統で常に容量が余っているのが現状だ。第三に、地域間連系線の新設には巨額の投資費用を要する。例えば交流の連系線の新設には、総額約4000億円かかるという(4000億円は一般的にいわれる原子力発電所一基分と同額だ。地震やその他トラブルによる運転停止のリスクを考えれば、100万kWの発電所を一基建設するより、同じコストで他エリアとの電気のやりとりをスムーズにする施設建設のほうが、効果的とも考えられる)。
地域間連系線は日本全国を一つの市場とするために必要不可欠で、かつ送電ネットワークは広がるほど安定的になる。稼働率が低いという現状と新設には高額の投資が必要ということであれば尚のこと、その機能は最大限有効に活用されるべきである。
ここで重要な役割を担うのが、日本卸電力取引所(JEPX)である。JEPXは2003年11月、日本初の全国規模の卸電力市場として「新規参入者への電源調達の場の提供」及び「事業者の需給ミスマッチ時の電力の販売・調達手段の充実」を目的に設立された。電気事業分科会においても、その活性化を図る議論がなされるような、まさに市場の「競争・効率性」実現に期待のかかる存在である。
連系線の混雑がない場合、JEPXで行われるスポット取引価格は全国同一価格で約定する。しかし実際には、東日本と四月以外の各月のほぼすべての時間帯において市場分断が発生していたという。
市場分断が起こり、受電側(需要)の地域の価格が発電側(供給)の地域の価格を上回ると、JEPXが受電側から受け取る金額は、発電側に支払う金額を超え、超過金が発生することになる。超過金というくらいなので、価値は取引に反映されていない。
市場分断の要因である「連系線の制約」は回避できないのか。それには、連系線の容量に影響を与える一般電気事業者間の「電力融通」が鍵を握る。電力融通とは、需給や系統の合理的な運用といった広域的観点から需給安定の確保のために、沖縄電力を除く一般電気事業者及び電源開発株式会社の10社によって行われているものである。
確かに、広域的な電力融通により「安定供給」が実現されてきた実績はある。例えば、中越沖地震による原発故障の際も、各地からの応援により東京の電力供給は安定的に保たれた。また各社が協調して発電及び送電設備を運用することで、無駄な投資がなくなり、資源の有効利用が図られ「環境問題」にも貢献してきたことだろう。
JEPXは電力市場の競争において重要な存在であるが、電力融通のしくみと同時に存在することによって、その存在と意味は形骸化している。その顕著な例が、特定規模電気事業者(PPS)と一般電気事業者との取引条件の相違だ。PPSは、非常時であろうと同時同量が達成できなければ高額なペナルティを支払わなくてはならない。一方、一般電気事業者は10社間で取り決めた規約に基づき取引費用を決済しているようだ。融通の諸条件を10社間で定めた規約が公にされていないため、具体的な金額は不明であるが、PPSに課せられている金額に比べ低いことは容易に想像できる。
また、取引所で市場分断が生じたときに、連系線の容量のうち電力融通はどの程度を占めているのか。月別・連系線別の融通利用実績データと取引所の市場分断状況と要因のデータを突き合わせることができれば、融通が取引所不活性の一因でないか検証することができるだろう。もっとも、市場においてJEPX取引による調達は0.19%しかないが。
以上を踏まえると、電力系統利用協議会(ESCJ)と中央電力協議会を統合させ、電力融通(全国及び二社間融通)とJEPXの取引を合わせたすべての連系線取引を管理・運用することで、全国規模のマーケットは成立するのではないだろうか。これが達成されると、より広域的に「安定供給」が確保される。さらに全国統一的に設備の効率化が図られるため、単一では困難な「環境適合」にも効果的だ。そして最後に、JEPXの活性化で、新規参入者の電源調達の条件が一般電気事業者との間で平準化され、「競争・効率性」が促進されるのではないだろうか。
現状では「地域間連系線」という市場を分断する物体的な問題が自由化の阻害要因として懸念されているが、機能を有効に活用することで全国規模のマーケットを実現することは不可能でない。また、それが実現すると間違いなく自由化は加速することだろう。まずは「電力融通制度」を再度見直し、JEPXの機能を拡充させることが必要だ。
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