電気

電力事情

電力自由化とPPS事業者 電力市場の歴史に学ぶ将来像

2007/10/01 更新

日本の電力市場の歴史は、日本初の電力会社である「東京電燈株式会社」が1887年(明治20年)送電を始めたところから開始する。その後、大正末期にかけては電力会社が続々と誕生し、買収や統合が繰り返される競争状態に突入、1930年代初めには、事業者数がなんと850社にまで増え、ピークを迎える。


 その後、第一次世界大戦後の経済状況の悪化、さらには満州事変を皮切りに軍色が強くなるにつれ、電力事業の国家統制が望まれるようになり、ついには、1938年「電力国家管理法」「日本発送電株式会社法」が制定、1939年国策企業である日本発送電株式会社が設立された。また、1941年には「配電統制令」が公布され、それまで412社存在した配電事業者は、九社に統合されることになる。 太平洋戦争後、GHQ主導で財閥解体など経済の民主化が独占禁止法、過度経済力集中排除法などの新法に基づき進められ、1950年に公布された「電気事業再編政令」および「公益事業令」によって日本発送電は解散となる。翌年、民営九電力会社(これに、本土復帰後沖縄電力が加わり、現在は10社体制)が誕生、各地域において垂直一貫体制の下、供給義務を負うことになり、そのほぼ10年後である1964年、電気事業の健全な発達と需要家利益の確保を目的とする現行の電気事業法が制定された。


 その後30年、日本は停電が少なく、電気の安定供給が保障される国となったが、その反面、料金水準が先進諸国の中で突出して高い国となった。規制による効果と弊害が出現したのである。1990年代に入ると規制による弊害がより一層顕在化し、日本産業は国際競争力を急速に失っていく。産業の空洞化が社会問題になり、アルミや一部の半導体にみられるように高い電気料金水準が産業を圧迫し、それが原因の一つとなって廃業にまで追い込まれる例が現れた。
 この様な事態を受け、1995年4月、電気事業法はなんと31年ぶりに改正されることになる。その主たる目的は、電力産業のコスト削減と効率化であり、具体的処方は、卸供給事業(IPP制度)の導入やヤードスティック方式の導入等であった。


 さらに、佐藤通産大臣の「2001年までに国際的に遜色のないコスト水準をめざし、我が国電力のコストを中長期的に低減する基盤の確立を図るため、今後の電気事業は如何にあるべきか」という諮問をもとに、1997年、電力小売自由化に向けた一連の動きが始まる。電力産業の合理化・効率化促進のため、競争原理の導入が不可欠であるとされ、それまでの、独占が保障されなければ安定供給の確保がなされないという論理が転換された。これ以降、わが国の電力制度は、「統制・規制」の時代から「自由市場」時代へと大きく転換を果たすことになる。


 まず、1999年に電力小売市場が部分的に自由化されるという、一大改革が行われ、この改正により、2000年わが国の電力史上初めて「特定規模電気事業者」いわゆる「PPS」が出現することになる。このときの制度改革により、送電線利用制度整備、料金引下が認可制から届出制となった他、「部分供給」が認められたことにより、需要家は一定期間前までにどの事業者から電気を購入するかを決めることが制度的に可能となった。


 次に2005年、自由化の対象範囲が高圧需要家全体まで拡大され、振替供給料金の廃止や、卸電力取引所の整備等、徐々に「競争市場」をベースとした電力取引体制確立に向けた実行策が実現されてきた。
 そして2007年。自由化開始後七年たった現在、PPSは22社、シェアはわずか自由化分野全体の2.37%と伸び悩んでいる。また、PPSにとっての電源調達手段として期待されていた卸電力取引所での取引シェアは販売電力量のわずか0.2・二%にとどまっているのが現状である。


 この現状を打破すべく、卸電力市場の活性化や託送制度のあり方などの競争環境整備に資する制度改革が具体的に検討されるべきとの考え方の下、制度改革ワーキンググループにおいて具体的検討が行われることになっている。この検討作業が行われるにあたり、規制下におかれていた一般電気事業者はこれまで各エリアで独占を与えられてきたこと、そしてこの独占状態が解消されないまま、今回の一連の自由化に向けた取り組みが開始されたことが十分に認識されるべきであると考える。自由市場における独占の維持は、絶対に回避されなければならないからだ。


 これまでの歴史から分かることは、「自由化か規制か」という問いは、常に国際社会で勝ち抜くための政策として決定されてきたことだ。そして、現在、我々は新たな転換地点の真っ只中にある。先進諸国のみならず、台頭するアジア諸国との競争を余儀なくされる今日の国際情勢の中で、これからの50年間日本が勝ち残っていくためには、電気事業法により電力の安定供給が保障されるというだけではなく、独占禁止法により公正な競争環境が保障されることが不可欠である。
 安定供給に不安がなく、かつ自由競争市場による合理化・効率化の恩恵が享受できる電力市場実現に向けた制度が再構築されることに期待する。

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