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電力事情

電力市場はほぼ完全な独占状態 自由化範囲拡大の議論は必須

2007/07/01 更新

 2007年4月、電気事業分科会が再開された。今次電気事業制度改革では、前回からの申し送り事項である『小売全面自由化の検討』つまり自由化の範囲の拡大という論点に加え、これまで導入された制度の今後の在り方、電力自由化と原子力発電の関係を含む環境問題との関係等が論点として挙げられている。


 だが最大の論点となるべき自由化範囲の拡大については既に新聞等でも報道されている通り、現在のところ消極的な意見が多い。
 市場活性化のため、これまで導入された制度を見直すことや原子力、環境問題といった論点が重要なことは間違いない。しかし、家庭用を含めた自由化範囲の拡大という大きな論点を議論の場からおろしてしまってよいのだろうか。
 家庭用を含む小口の消費者が自由化対象となることは、小売市場の競争を活性化させる効果があると考えられる。なぜなら、家庭向けの小売市場が自由化された場合、異業種からの参入を期待できるからだ。


 例えば、住宅販売業者が電力市場に参入することも想定できそうだ。安価な電気を供給する住宅は、強力なPR材料になるはずだ。また、プロパンガスの販売者など戸別営業を行う者が電気の小売りに参入してくる可能性も十分ある。
 異業種参入が進むことで、電力市場の制度上の問題がより明確化される可能性が高い。環境に配慮する個人の嗜好が、電力供給者を選択する場面も増えていく。そうした潮流は、今次改革において検討されるべき他の論点に対しても、少なからず影響を与えるだろう。
 つまり全面自由化することは、電力市場という特異な市場をより普通の市場へと変えてくれる鍵となり得るのだ。


 これまで電力自由化に伴う制度改革により電力市場にはさまざまな変化がもたらされてきた。その変化を一言で表すなら『公認の独占市場が競争仕様の市場になった』ことである。
 自由化が進む中、電力会社(一般電気事業者)は、約款の変更や新たな選択約款創設を重ね、徐々に電気料金を低下させた。これは、電力会社がコスト削減のインセンティブを持ち、さらにそれを需要家に還元し始めたことを意味しており、これは現段階で自由化の最大の成果と考える。 しかし、電力自由化は未だ途上にある。前述の通り、これまでの自由化の成果は、電力会社が潜在的な競合相手の脅威を感じ料金を低下させてきたことにある。しかし、これは電力市場が正常な競争状態にあることを示しているわけではない。 正常な競争状態とは、事業者が経営効率を追求しながら利益の拡大に努め、一方の消費者は適正な事業者を自由に選択できることだと考える。すると、その対極にある異常な状態とは、事業者が積み上がったコストを価格に転嫁し、消費者がそれを選ばざるを得ない状態といえる。


 この異常な事態は市場が独占されている場合に起こり得る。
 市場の競争状況を計る方法の一つ(あくまで目安)に「HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)」というものがある。これは、独占禁止法の運用にあたり、特に企業結合(合併等)の際に用いられるものだ。 HHIの算出方法は、「各事業者のシェアの二乗の総和」で、数値の幅は「0から1万」である。その数値が1000未満であれば問題がなく、1800未満が合併許可のボーダーラインとされており(他の状況の分析により1800を超えても合併が許可される場合がある)、さらに競争が集中し、寡占状態になると3000〜5000程度となる。


 身近なところで、ビールの市場を例としてとりあげると、4社が、40%、30%、20%、10%のシェアで争っているとする。するとHHIは40×40+30×30+20×20+10×10=3000となり、これは競争状況の評価としては好ましくない状況といえる
 反対に、未だ有力企業が存在せず、100社が1%ずつのシェアを争っている市場を考えてみると、HHIは、1×1+1×1+ ......=100となり、これは競争状況の評価として好ましいといえる。


 それでは、現在の電力市場のHHIはどうなっているのだろうか。経済産業省の資料によると、供給区域ごとに市場を分けてHHIを計算すると、なんと9072?1万であるという。これはほぼ完全な独占市場であり、特異な市場といえよう。このような市場では、事業者にコスト削減や効率的に生産をするインセンティブが働かないため、サービスの質の低下や価格の引き上げが行われかねない危険な状況であり、この危険な状況を放置しておいてよいはずはない。


 電力市場への参入者が多くなることで市場が正常な状態になり、さらに参入者が増える。参入者が増えると消費者に向けて発信される情報量は増大し、個々人がより自分の求めるサービスを追求できるようになり、事業者が提供するサービスの質が向上する。
 規制の在り方は、時代や社会の流れ、技術革新といった状況の変化に適応させていくべきものである。自由競争状態が市場の正常な状態であるならば、まず、すべての消費者にその恩恵が行き渡るようにすべきではないか。その上で必要となる規制があれば、改めて検討をすればよい。
 現在の時代や社会に適した新しい仕組みを導入する姿勢が望まれる。

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