電気
電力事情
自由化範囲拡大の先送りに疑問 適正な競争市場整備が先決
2007/04/01 更新 2007年1月、経済産業省が2009年にも実施する予定だった家庭向け電力への参入自由化を当面見送る方針を固めたという報道がなされた(2007年1月6日付・日本経済新聞)。
記事によると、原油価格の上昇などを背景に、現状では自由化しても新規参入が進みにくいという判断がされた結果だという。経済産業省は家庭向けについては安定供給も重視して自由化を先送りし、当面はすでに自由化対象となっている産業用など大口需要家向けの電力の競争を促す方針とのことだ。
この経済産業省の意向について、二つの疑問点を指摘したい。
まず、経済産業省は、『家庭向けに電力供給を開始する新規参入者の出現が見込めないため家庭用を対象とした電力自由化をしない』のだろうか、ということである。
電力市場自由化の目的は、海外諸国と比較して割高とされていたわが国の電気料金を削減することであった。それまで地域独占であった電力市場を自由化することで市場内に競争が起こり、競争の結果、電気料金が下がることをねらっていた。つまり、市場への参入者がいなければ競争も起こらず、電気料金も下がらないため、自由化しても仕方がない......と考えることも確かにできる。
しかし、である。参入者がいないから自由化をしないというのはいかがなものか。自由に参入することができる市場だからこそ、参入を検討する事業者が現れると考えることはできないのか。
ましてや、新規参入が見込めない理由が原油価格の上昇というのはいかがなものだろうか。
確かに、昨今の原油価格の上昇は新規参入者にとって逆風であり、自由化の促進を阻む原因の一つとなっていることは間違いないだろう。だが、原油価格は上昇・下降するものであり、また、原油価格上昇の影響を受けている商品は数限りなくあり、それらの商品を供給している業者は自由市場の中で競争にさらされながらも勝ち残るためにあらゆる努力をしているのである。
さらに、家庭用の電気料金単価は、一般的に20円/kW時を超えている。これに対し、大口産業用の料金単価は10円/kW時をきっているところもあり、業務用の料金単価でも12?13円/kW時となっている。つまり、家庭用の料金と既に自由化対象となっている高圧以上の需要家向けの料金との間には二倍もしくはそれ以上に単価の差があるわけで、家庭用向けに供給する事業者が出現する可能性は十分にあると考えられる。
この価格差をもってしても家庭用向けに電力供給を開始したいと考える事業者が出現しないというのであれば、それは原油価格の上昇といった外的要因ではなく、託送料金や送電サービスの不公平さ、卸電力取引所の問題など、電力市場の仕組み自体に問題があると考えるべきではないか。
次に、新規参入者=非電力会社のような扱われ方をしているのはなぜなのか、ということに強い疑問を感じる。
需要家の立場からみて最も安心感をもって契約をスイッチできる先は、他供給エリアに電力を供給している一般電気事業者ではないのだろうか。一般電気事業者は自社供給エリア内で家庭用需要家に電気を供給しており、利益を上げる構造ができているのであるから、エリアを越えた供給に乗り出し供給量を増やそうとすることはしごく自然なことのように思われる。
自社管内で利益を上げている一般電気事業者でさえ、隣のエリアに進出することができないというのであれば、これはまさしく制度上何か問題があると考えざるをえないのではないか。
"自由化の範囲を拡大するか"ということと、"市場の競争環境をいかに整えるか"ということは、それぞれ個別の問題として議論されなければならないだろう。
市場が競争的になるようにその環境を整備することはもちろん重要なことであり、現在の日本の電力市場に新規参入者が少ないのは、この環境が整っていないからだということは明白である。
こういった市場環境の整備と、自由化範囲拡大は、並行して進めることは可能ではないのだろうか。家庭用を含めた低圧・電灯受電の需要家から自由に電力供給者を選択する機会を奪うというのであれば、そうしなければならない十分な説明がなされる必要がある。もし、自由化しても参入者がいなければ選択の機会が増えないから、という理由で自由化されないのだとすれば、それは大きな問題だ。事業者が電力市場を魅力的な市場と考えて新規参入するかどうかが事業者の自由な判断に委ねられるのと同様に、需要家には自由に選択する機会を与えられるべきではないのか。
特に、低圧・電灯受電需要家までの自由化拡大は家庭用への自由化拡大と考えられがちだが、実際には小さな工場やコンビニエンスストア等を含めて事業用で利用している需要家も数多くいる。こういった需要家は、例えばコンビニエンスストアであればスーパーのような大型店と競合状態にあり、一方の大型店は自由化対象となって電気料金が下がり、小型店は自由化対象ではないため電気料金が下がらない、もしくは下がっても下がり幅に格差があるということになると、競争状態に大きな影響を及ぼすことになりかねない。
"電力"はなくてはならない財であればこそ、需要家の規模別に自由化のスピードが著しく変えられるということはあってはならない。選択の機会はすべての人に平等に与えられるべきなのではないかと考える。
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