電気
電力事情
検討が始まる電力全面自由化 課題は送配電の説明責任
2007/01/01 更新2000年3月より段階的な自由化の拡大が実施されてきたわが国の電力市場において、ついに小規模工場や商店、一般家庭までを含む全面自由化に向けた議論が2007年4月以降開始される見込みである。
電力小売自由化は00年3月、需要規模2000kW以上を基本とした特別高圧受電需要家を対象としてスタートした。特別高圧受電需要家の使用電力量からみた場合の市場シェアは27%だ。
その後、04年の高圧B需要家(シェア14%)、05年の高圧A需要家(シェア23%)が自由化対象となり、現在に至る。
現時点で合計64%が自由化対象となっており、残りの36%について自由化を拡大するかどうかの議論が2007年4月以降開始される見込みである。
この36%のうち、低圧受電(小規模工場やその他需要家の動力部分の需要)の契約口数は約630万口でシェアは5%、残り31%は家庭用を中心とする契約口数約700万口の電灯需要となっている。
06年6月、公正取引委員会は『電力市場における競争状況と今後の課題』という調査報告書を発表した。この報告書によれば、PPSと呼ばれる新規参入者の電力市場におけるシェアは、東京電力、関西電力、九州電力の三電力会社エリアの特別高圧業務用需要を中心に拡大してきているが、特別高圧業務用需要家シェアが全電力市場の六%とわずかであることから、ほとんどのエリアにおいてPPSの市場シェアは未だに一%にも満たないというのが実情である。
かかる状況を鑑みて、これまでの電力市場を一部自由化したことの効果はあったといえるのだろうか。
電力自由化の最大目的は、割高な電気料金を低減することであった。00年から現在までの電力価格の動向を調べると、最も競争が激しい特別高圧業務用需要家の電力価格は、自由化前に比べて75.7%と25%近く下がっている。 これに対し、ほとんど競争の起こっていない特別高圧産業用需要家の電力価格は90.7%、自由化対象外の需要家の価格は91.9%と、値下がり幅はそれぞれ10%弱。競争が価格に与える影響は、少なくないことがよく分かる。
また、公正取引委員会は、サービスの満足度にも、自由化対象需要家と規制分野の需要家との間で大きな開きがあると指摘。特に料金メニューの多様性について自由化対象の満足度が高く、規制分野の満足度は低い。
つまり自由化された電力市場で十分な市場競争があるとはいいがたいが競争の効果が生じていることも、また確かなのである。 では、一般家庭にとって自由化はどのような効果があるのか。
どの電力販売会社と契約するか、どういったメニューを選択して契約をするか。その選択の機会が個々の家庭に与えられることは、電力市場の活性化につながると考えられる。
自由化以前の一般電気事業者間の料金格差は約10%、現在は若干縮まったようだが、それでも9%程度の格差はあるといわれている。規制分野の需要家である一般家庭は電気の調達先を選べない。電気代を下げるには、最も安い電力会社のエリアに引っ越すほかないわけだ。
価格だけではない。例えば、環境問題に関心の高い家庭なら、自然エネルギーを利用した発電所からの電気を多少料金が高くても買いたいと考えるかもしれない。しかし、現在のように電力会社が選べない状態では、個々の嗜好を反映させることはできない。
事業者に比べ需要規模が小さく、交渉力が弱いと考えられる家庭用にとって本当に自由化のメリットがあるのか。自由化で価格が上がる心配はないのかなど、家庭用までの自由化拡大については、さまざまな不安もあるだろう。全面自由化にあたっては、そんな不安を払拭することが不可欠であると考える。
その中でも、最も重要なことは、自由化に伴い、電力会社以外の事業者から電気を買う契約をしても、電気を使用する上で技術的な問題は起こらないということを明確にすることだと思う。
電気を発電所から需要地まで送るのは送配電部門の責任であり、現在既に電気を使用している家庭はもちろん、新規に電気の契約を行う家庭についても、送配電に関しては電力会社から電気を買う場合と遜色ないスピードとサービスの質が保障されることが需要家に明確にされる必要がある。
既に自由化されている需要家に対しても、こうした事実の説明が圧倒的に不足している。それが、市場競争の活性化を阻害しているような気がしてならない。その原因は、説明責任を果たす役割がどのプレーヤーにあるかが明確でない現状にあると私は考える。
新規参入者であるPPSが説明すべきなのか。たとえPPSが熱心に説明したとしても、需要家はPPSが電気を売りたいがためのセールストークと、不安を払拭しきれないだろう。では電力会社の営業部門がその説明責任を負うべきなのか。PPSと競争関係にある営業部としては、どの事業者から電気を買っても質は問題ないなどと積極的にPRするインセンティブは働かないだろう。
私はこの役割を担うべきは送配電部門だと考える。自由化の中で唯一公益部門として残る送配電部門こそが、どの事業者から電気を買うとしても電気の質には問題がないという事実を需要家に説明すべきではないか。
今後、電力市場の競争活性化のためには、送配電部門に対して需要家が気軽にアクセスできる仕組みづくりが不可欠だと考える。
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