電気
電力事情
広域融通と電力市場の関係 変革が期待される融通の形態
2006/10/01 更新電力会社間で電力を融通し合う広域融通の仕組みは、電力の安定供給と電気料金の安定化を目指してつくられたものだ。
まず、その歴史的背景をみていこう。第二次世界大戦後、一度は激減した電力需要が急伸し、1940年代後半、電力不足が深刻な社会問題となった。これを改善するため、51年に電気事業の再編成が行われ、現在の発送配電一貫、自主経営責任の九電力会社体制がとられた。さらに翌52年、電源開発促進法が制定され、電源開発会社が特殊法人として発足。今日の電気事業体制の基礎が確立される。
この新体制により50年代中頃には、需給の均衡はほぼ保たれるようになった。だが50年代後半、好景気により再び電力需要が急増。さらなる電源開発が促進された。
このような大量の電源開発により、供給力は確保できた。しかしその一方で電力原価は高騰し、電力会社の収支が厳しくなってしまう。もたらされたのは、電気料金の改訂という事態だった。
政府はこうした電力問題の趨勢をかんがみ、58年3月28日、電気事業の基本対策として、電力原価上昇の抑制、料金の地域差の調整、需給の円滑化等への貢献を目的に、広域運営方式の導入を閣議決定した。
これが、わが国の電力広域運営の始まりである。政府は電力会社と電源開発会社との協力の下に協同体制を確立し、また中央給電指令の強化等、必要な補正を行うことで、安定的な電力供給体制を築こうとしたのである。
以来今日まで、広域運営方式の体制下で広域融通は行われている。
さて、歴史的背景が理解できたところで、次に電力融通を説明しよう。 一般電気事業者が相互に電気をやりとりすることを「電力融通」といい、これには「全国融通」と「二社間融通」がある。
全国融通は、広域運営のための協調が目的とされ、一般電気事業者間で締結された取り決めに基づき電気の受給を行う。これに対し、二社間融通は、二社間の契約に基づいて電気が受給される。
従来、全国融通には、「需給相互応援融通」「広域相互協力融通」「経済融通」の三種類があった。次にこの三種類の融通を簡単に説明しよう。
まず、需給相互応援融通とは、設備のトラブルや予想外の需給急増などによる供給力不足が発生した(または発生が予測される)場合に、供給余力のある周囲の電力会社から電気を送ってもらう仕組みを指す。つまり、自社の供給力が不足したとき、周囲の電力会社に助けてもらう仕組みだ。
次に、広域相互協力融通とは、自社内の需要が少なく原子力発電所の供給力に余力が出る場合や大雨が降って水力発電所の供給力に余力が生じてしまう場合に、他の電力会社に電気を送ることによって資源の有効活用を図る仕組み。つまり、自社内の需要量よりも、原子力、水力発電所の供給量が多い場合に、周囲の電力会社に電気を引き取ってもらう相互補助制度である。
最後の経済融通とは、自社内の供給力が確保されていることを前提に、発電単価が自社よりも他社の方が安く、かつ発電に余力が生じている場合において、発電単価が安い事業者に多く発電してもらい、電気を送ってもらうことでコスト削減する仕組みを指す。つまり経済融通は、電力需給のバランスとは関係なく、コストの最適化を図るための仕組みといえ、前述の二つの融通とは若干意味合いが異なる。
この広域融通の仕組みは、いわば九電力会社体制の確立と共に40年以上続いてきたのだが、2000年の「電力自由化」という大きな制度改正により、仕組み自体の変化が余儀なくされた。
まず、経済融通については、電力自由化以降、新しく電気事業者となった特定規模電気事業者(PPS)にも開放され、一般電気事業者間の融通から、より広いメンバー間での取引が行われるようになった。さらに、05年4月より卸電力取引所(JEPX)の運営が開始されたことにより、経済融通は姿を消すことになる。なぜならば、経済融通とは日本全国でコストを平準化するための仕組みのため、自由化された電力市場とは相容れないからである。
06年8月現在、その他の融通はまだ廃止された様子はないが、すべての融通をJEPXの仕組みの中で行うことができるようにすべきではないかという議論がある。
特に、広域相互協力融通は、原子力や水力発電所に余力がある場合に他の電力会社に電気をひきとってもらうという特性のものであるが、こういった余剰電力が一般電気事業者間で取引され、新規参入者にはアクセスできないことについて問題視されている。
さらに、需給相互応援融通についても、一般電気事業者間のみでバックアップ体制をとっていることは、公平性の観点から疑問が残る。現在、PPSは、区域の電力会社と接続供給約款に記載された条件で事故時バックアップ契約を締結している。だが、この条件が一般電気事業者間のバックアップの条件と同レベルなのか確認はできない。
また、PPSが広域融通の仕組みの中に組み込まれていないことは、PPSの中で一般電気事業者と同規模の事業者が出現するという想定でみると、非常に危ない状態であることがわかる。例えば東京電力の管内に、東京電力と同規模の供給力を持つPPSが存在するとして、PPSは東京電力に対して融通を行わないが、東京電力はPPSに対してバックアップを行わなければならないという状態になるからだ。
つまり、現在の仕組みは、あくまでPPSの規模が一般電気事業者に対して圧倒的に小さいことが前提になっている。
電力自由化が進められる中、現在の広域融通と電力取引市場の関係は過渡期のものであるといえるだろう。今後どのように発展するのかは、わが国の電力市場のあるべき理想の姿と共にこれから形作られていくのではないかと考える。
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