電気
電力事情
ユーザーの電力市場への本格参加なるか 「次世代エネルギー・社会システム」の構築
2010/04/02 更新2010年1月、次世代エネルギー・社会システム協議会の中間とりまとめ(案)「次世代エネルギー・社会システムの構築に向けて」が発表された。低炭素社会の実現と、その鍵を握る自然エネルギーの大量導入のためのシステム構築について検討された結果がとりまとめられている。
太陽光や風力発電といった自然エネルギーを用いた発電方法と、石炭、石油、天然ガス発電といった化石燃料を用いた発電方法とでは何が違うのか。一言でいえば、化石燃料などを用いた発電方法は、発電したい量に応じて投入する燃料の量をコントロールすることが可能であるのに対し、自然エネルギーを用いた発電方法では、制御できない自然エネルギーの量で発電量が決まるということである。つまり、自然エネルギーでは、好きなときに好きなだけ発電をすることができず、太陽まかせ風まかせで電力の量が変わってしまう。
これとあわせて「電気は備蓄がきかない」という特徴も問題となる。例えば「水」であれば、使いたいときに都合よく雨が降るわけではないが、雨のときに貯めておいたものを適宜使うことができる。しかし、電気はこれができない。
自然エネルギー発電の割合を増やすことの難しさはここにあった。これらの問題を解決し、低炭素社会を構築するために必要とされるのが「次世代送電ネットワークの構築」である。天候の変動で出力が変わる自然エネルギー発電(特にメガソーラーといわれる太陽光発電が主軸)の大量導入を可能にする送配電系統網と余剰電力を貯蔵するための蓄電池システムの構築で系統安定化を図る必要があるそうだ。
この自然エネルギーの大量導入は、電力供給の基本的な仕組み自体に大きな変化をもたらす。なぜならば、これまでは大型の発電所で効率よく発電された電気が送配電網を使って需要地まで届けられるのが基本的な仕組みであったが、現在普及が進められている太陽光発電などは個々の住居に設置され、余剰電力については送配電網に流されることから、極端にいえば太陽光パネルが設置された個々の住居が発電所になり、多数のポイントで発電された細かい電気を送配電網の中で集めて周辺地域の電力需要の一部をまかなう、いわゆる地産地消の仕組みになるからだ。
さらに、需要サイドにも「スマートメーター」という仕組みが導入される。これは、ただ使った電気量を計量するという現在のメーターと異なり、発電量に応じて需要量のコントロールをする機能を持つ。例えば、発電量が多いときに、給湯器でお湯を大量に沸かしたり、自動的に洗濯を開始したりすることが可能になるのだ。
再生可能エネルギーが大量に導入されても安定供給を実現する強靭な電力ネットワークと電力の地産地消モデルの相互補完する仕組みが「日本型スマートグリッド」だ。政府は2020年の実現に向けて系統対策を進めるとともに、技術的課題、社会コスト最小化の観点から検証を進めるとしている。
ここで再度考えたいのは電力自由化と「次世代エネルギー・社会システム」の関係だ。2000年より始まった電力自由化の目的は、世界的にみて割高といわれる日本の電気料金を削減することにあった。電力小売市場を自由化することで、需要家は好きな電力会社から電気を買えることになる。つまり、市場に競争が生じることで価格を下げることが狙いとされた改革であった。 結果はどうか。自由化対象となっている特別高圧・高圧需要家の中でも一体どれほどが複数の電力会社の料金やサービスを比較検討して契約できているのであろうか。ほんのわずかである。また、自由化開始後10年経った今でも、新規参入者は10年前に直面していたのと同じような、送電網の利用条件を中心とした問題に悩まされることもあるという。そんな状態で日本の電力自由化は止まっているのだ。
電力自由化が、このような結果となった原因の一つは、これまでの電力自由化が、電気という商品が誰から買っても同じ質の商品であるために価格のみが競争の要素となり、供給サイド主体でひっぱってこられたことにあると考える。今回とりまとめられた「次世代エネルギー・社会システム」が構築されることで、需要家は自ら電気の供給者となったり、自ら需要量をコントロールできるという要素が加わる。これで、ようやく電力市場にユーザーが本格参加できるようになるだろう。さらに、構築される仕組みによっては需要家自らがどういった電源の電気を使いたいか、という嗜好を表せるようにもなる。
このような需要家のニーズが供給者の動きを促す、これ以外にわが国の電力自由化を進化させる方法はないように思われる。
(スペクトルパワーデザイン株式会社 村上晶子)
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